その時だった。
突然、空に影がかかったと思うと…。
「化け物だ…っ!」
「化け物が来たぞ…!」
そこにいた人達が口々に、叫びだした。
そして、あたしの横をすごい勢いで横切っていく。
なに…?と思ったあたしは、黒く染まっていく空を見上げた。
すると…。
幾つかの青い炎とともにその姿は、吹いてきた風に乗って、現れた。
その瞬間、あたしは言葉を失い瞳を丸くした。
「…う、うそ……」
だって…。
誰がどう見ても、その姿は巨大な狐そのもの。
しかも、九つの尻尾は燃え盛る業火の如く、四方八方に広がっていた。