屋上の、白で塗られた扉を開けると、肌寒い風があたしに向かって勢いよく吹いてきた。
「悪い、黒瀬……」
「ううん、別にいいよ。
…で…、話って?」
「あー…、俺じゃなくて……こいつが…」
そう、木村くんが言った瞬間。
カランッ、という美しい音と同時に艶めかしい姿の人が現れた。
「え、猫鈴さん…っ!?」
「…すみません。千秋さん」
「いえ!そ、そんな…!」
「……貴方は、狐燈さんを愛しく、お思いですか?」
両手を前に出して焦って言ったあたしに対し、猫鈴さんは微笑む。
それは、あまりに美しく…儚かった。
「……え、と……
…なんで、ですか?」
「もしも、これからもずっとその想いがあるのなら…
あなたに過去の一部を、解放します」
ゴゥ…、と風が勢いよく吹き抜けた。