その言葉を聞いて、なるほどね。と思う。
「…あ、…ってことは…」
「ああ、あいつは…猫叉」
「えっ、あの尻尾が2つに分かれてるっていう!?」
「へぇー、よく知ってんじゃん」
…意外にも普通に笑う木村くんに、少しだけびっくりする。
「黒瀬に憑いてるあれは…妖狐か…」
「…うん」
「…そういや…
昔聞いた猫鈴の話にも、それみたいな妖狐が出てきたな……」
ふと、夜空を仰いだ木村くんが眉をひそめながら口元に指をあてて、考えるように呟いた。
「…え?
そ、それってどういうこと…!?」
「……あー…。
俺も詳しいことはわかんねぇんだけど―――」
そう前置きをしてから、木村くんがゆっくり話し出した。
…この、満月の夜の下に木村くんの声が、静かに響いた。