「…そんなにあたしに知られちゃ、まずいの?」
「……いいえ。そうではありません…」
そう言って、よろよろしながらあたしの横を通って行ってしまった。
最近妙に元気ないなぁ…
と、思ってたけど…。
……かといって鬼野郎に聞くのもな…
『──あとはあの狐から聞け』
ああ言われたし……。
しかも、なんか強要されたら嫌だし…
やっぱり止めておこう。
──……なにか、…過去に関する“何か”なのかも…。
やるせないまま、あたしも部屋へ戻ろうとした時。
シャラン、カラン、と鈴のような音があたしの耳に届いた。
………?
しかし、辺りを見回しても何一つ変わった様子はない。
気のせいか、と思い、そのまま部屋へと戻った。