「…で、どうかした?」
すると、砂狗の姿は風に包まれるとともに人間の姿へと変化して。
「月見だ、千秋!」
開口一番意味のわからないことを言い出した。
「………は?」
「今夜は満月だ。月見をするぞ」
唖然とするあたしとは逆に、砂狗はすごく楽しそう。
なんだって? ……月見?
「じゃあ、夕方あの大樹にな」
「…え、ちょ…っと…」
あたしの言葉などもう届くわけもなく、砂狗は再びどこかへ行ってしまった。
……まるで嵐だ…。
…にしても、月見かー…。
はぁ、とため息を吐いて、あたしも再び机に向き直る。
………ん?
そういえば、狐燈の姿がない…。