「…びっくりしたー…」
「……何を…」
「…え?」
「何を、なさっているのですか…」
微かににふらつきながら、あたしに近づいてくる。
しかも、顔は真っ青でうっすらと汗が浮かんでいる。
…………?
「……ええっと…
ほら、今日迷惑かけちゃったじゃん?
だから、そのお詫びでカレーを…と…っ」
えへっ、とほぼ誤魔化した笑顔でそう言うと、ふいに抱きつかれた。
突然のことで、あたしはもうテンパるしかない。
同時にぐるぐると、ハテナしか出てこない。
「…え!? ちょ、狐燈…っ!?」
「すみません…。
しばらくこのままでいさせてください」
………焦げないかな…。
「……ねぇ…」
「…はい」
「カレー……好き?」
「はい。好きです、大好きです」
「…そ、そっか。
それなら良かった…」
遠くから、カラスの声と子供達の声が夕焼け色に染まる空に溶けるように響き渡っていた。