―――――――…
「…あち…っ!」
と、勢いよく手を引っ込めて、再び手を伸ばしてグツグツ煮だっている鍋の蓋を開ける。
中身は良好。とてもいい香り。
ふわふわ、と香ばしい香りが部屋全体を包み込む。
夕食は何にしよう、とスーパーで散々悩んだ結果、カレーになってしまった。
……そう。カレー。
あの、ルーを使って簡単にできると云うアレ。
いいじゃないか、カレー万歳。
鼻歌でも出てきそうな気持ちで、あたしが鍋の中をかき回していた時だった。
「――――千秋さま…」
ふいに、聞こえたその声であたしは思わずびくん、と肩を揺らす。
すぐに、パッ、と後ろを振り返ると狐燈が驚いた表情で、壁に手をつきながらあたしを見ていた。