…じゃあ、なんで雅は…
────契約しようとしたの?
そもそも、一番はそこだ。
あたしが嫌いなのはわかる。
権力を利用したのもわかる。
でも…じゃあ、どうして…
見えないのに、契約したいと思ったんだろう…
ぐるぐるしているあたしに気づいたのか、狐燈は優しく微笑みながら続けた。
「寂しかったのですよ」
「……え?」
「春樹さまの愛情が
貴方に向けられていると思い…
少しでも、近づきたかったのでしょう。
契約が成立すれば、そのような意味はすべてなくなりますので」
そう言いながら、水をはったボールの中へタオルを浸す。
パシャン、と水の弾く音を響かせながら、そのタオルを絞り、あたしへと渡した。
「……もしかして、全部わかってた…?」
「はい。」
ニッコリ、と笑顔で答えたが、すぐに目を伏せる。
「…ですが、貴方を傷つけてしまったことは
…どうしても…避けられないことでした…」
正座のまま、頭を垂れた。