……そもそも、あたしに両親はいない。
といっても、死んでしまったのではなく、
ただどちらも蒸発していっただけなんだけど。
最後に、なんであたしを産んだんだろう、
という言葉を残して去っていった。
別に涙なんてものは出なかった。
もともと、二人とも家に帰ってこない日なんて、しょっちゅうだったから…。
そして、あたしが独りになったって親戚すら助けてなんてくれなかった。
理由は簡単、あの人達が嫌いだったから。
だからあたしは、ひとりで生きて行こうと思い、今のアパートに移った。
今さら一人、二人…増えたって構わない。
…二人は少しきついかな。
――…あー…、暑い。
朝からミンミン、とセミの声が耳に響く。
「…これからどうしよう」
うーん、としばらく考えたけど、いい答えが出なかったので思考を停止した。
まぁ、なんとかなるだろう方式で。
そんなことを考えていた時。
「ちっあきー!」
元気すぎる声に、後ろを向くと飛鳥が腕を振りながら駆け寄ってきた。
「おはよー!」
「おはよー」
さすが、朝からこのテンションの高さ。
…飛鳥に相談してみようかな…
いや、でも別に言うことじゃないか…
ということで、とりあえず保留に。
それからあたしと飛鳥は、何気ないことを話しながら学校までの道のりを進んでいった。