「なに?」
「名前、教えて?」
一瞬、教えようか迷ったが一応教えることにした。
「…俺は榊原裕樹」
「そ…。私は桜井紗羅。よろしくね」
そう言って、女の子はふわりと微笑んだ。
「お、おう…?」
“よろしく”とは、どういう意味なのか
よくわからないまま、返事をしてしまった。
「じゃあ、また会えるといいね」
女の子…じゃなくて
桜井さんは俺に背を向けて
何処かへ歩いて行った。
―この出会いが…恋の始まりだとは
この時の俺はまだ知らなかった―
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