「裕樹」
「……翔。それに紗羅」
「教室戻ろうぜ。もう俺らしか居ないし」
そう言われて周りを見渡せば、俺たち以外誰も居なかった。
「紗羅は本多と戻ればよかったんじゃ?」
「紗羅ちゃんはお前が次の授業遅刻しちゃうかもって言って戻って来てくれたんだよ」
「そう、なのか?」
「うん。次森本先生の授業だしあの先生、遅刻にはうるさいじゃん?だから心配になってね」
そう言って困ったように笑った。
「紗羅ちゃんは優しいなぁ!裕樹羨ましいぜ」
「羨ましいって何が?」
「あーいや。なんでもない!」
「変な翔君」
おかしそうに笑う紗羅を見て、翔は照れ臭そうに頬を掻いていた。
それを見て「翔は本気で紗羅が好きなんだ」って思った。
「ってこんな話してる場合じゃないよ。もう少しでチャイム鳴っちゃうよ」