だから、諦めたくないんだ。

いつか紗羅ちゃんを振り向かせて、隣で笑っててほしい。

そう思えたんだ。

もし裕樹が紗羅ちゃんを好きって自覚しても俺は手を引かない。

けど、紗羅ちゃんが俺以外の誰かを好きになったときは

潔く諦めよう、そう決めたんだ。


「………君。……翔君!」

「!」

紗羅ちゃんに声を掛けられて我に返れば教室には俺と紗羅ちゃん以外誰もいなくなっていた。

「あ、あれ。他のみんなは?」

「教室移動だからみんな移動しちゃったみたい。私は職員室行ってて、戻ってきたら翔君が一人で席に座ってたからびっくりしちゃったよ」

クスクス笑いながらそう言う紗羅ちゃんはいつもの可愛さじゃなくて、どこかキレイさがあった。