それから数日後、桜井さんが転校してきた。
十年前と変わらず、どこにでもいるような普通の女の子だった。
でも、やっぱり笑顔だけはすごく可愛い。
教室に移動し、席を教えると早速早坂と仲良くなっていた。
「じゃあ次の授業の準備しとけよー」
そう言い残し、俺は教室から出て行った。
「……ちゃんと、教師ってこと自覚しとかないとな」
時折見せる飛び切りの笑顔。
その笑顔を見るたび俺は教師ってことを忘れそうになってしまう。
それはつまり、桜井さんを好きになってしまうということだ。
けど教師と生徒の恋なんてご法度だ。
俺はあくまで教師なんだ。
生徒に恋愛感情を持つなんてあってはならない。
自分にそう言い聞かせながら、俺は職員室へ戻って行った。
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