目の前では慌てる彼がいる。


周りには私たちを冷たい目で見る人たちがいる


「え、と、俺何かした?ねぇ夏樹、どうしたの?」


ただひたすら泣く私に彼はだんだん泣きそうになってきていた


「…ごめん…何でも、ないの。大丈夫…」


彼はホッとしたように息を吐いた


「一緒に帰ろっか」


気づいたら私はその言葉にうなずいていた。


帰り道、二人は何も喋らずただ黙ったまま家へ向かっていた


彼は気まずいのか時々わざとらしい大きな咳をしていた


その度に私のことをチラリと見る


私はただひたすら歩いていた

その沈黙を破ったのは要だった


「なぁ夏樹」


そう急に呼ばれた私は一瞬ビクッとした


「な、に?」


要は少し間を置いた後咳払いをし


「俺んちこねぇ?」


そう言った。