それ以降、帰り道私たちが交わした言葉は

「また明日」


それくらいだった。


私は、家じゃなくて、要の家に行った


今日は要の帰りが遅くなるからって、鍵を預かっていた


「ふぅー」


家に入って、リビングの大きなソファーに寝っ転がっていた


《ピンポーン》


いきなり鳴り響くチャイム


「はーい」


私は何の疑いもなくドアを思いっきり開けた


そこにいたのは…


さっきまで一緒にいた蒔絵だった。


蒔絵はびっくりした顔をしていたけど、すぐに笑顔になった


「大丈夫。要から聞いてるよ」


何が大丈夫なのか、


まぁ、要が事前に蒔絵に知らせてくれたから、説明する手間がはぶけた


「どうしたの?」


私がそう聞くと、蒔絵は思い出したように、


バックの中から私が要に貸した教科書を出した


「はい、これ」


「あ、ってか、何で蒔絵が?」


「あのね、要、今日結構遅くなるんだって。で、なつがよく理科の勉強してるから返しといてって言われたの」


そう言った蒔絵は、少し俯いた


そうだよね、いくらどんな事情があるにしろ、


好きな人が女の子と住んでるって嫌だよね…


しかも、私が勉強してるの知ってるなんて、もっと辛いんだろうな…


私は、何だか悪い気がして、蒔絵が家を離れるまで、蒔絵を直視できなかった