ちらりとルームミラーを見た。


何でかな。


ちょっと後ろの様子が気になったから。


ミラーの向こう側で、鬼頭の無表情な視線とばっちり目が合ってしまった。


ぎくり、として慌てて視線を外す。


だけど気になって俺はもう一度、今度は振り返って後部座席を見たけど、鬼頭は楠の肩にもたれ掛かって眠っていた。


気のせい……?






―――じゃないよなぁ。




あいつのあの射るような視線。


無表情に見えたけど、その向こう側に一瞬の強い憎しみを感じた。


「安心しろ鬼頭。俺ぁ男には興味ねぇよ」


ぼそりと呟くと、


「え?」と水月がびっくりしたように俺を見た。


「何でもねぇ」


俺はそっけなく言うと窓の外に視線を向けた。





――――


どれぐらい走っただろう。


高速道路は適度な渋滞で制限速度80キロのところを50キロでトロトロ走っている。


ゴソゴソ後部座席で物音がして振り返ると、口元を両手で押さえて鬼頭が青い顔をしていた。


「どした?酔ったか?」


「……うん、ちょっと…。ごめん、次のパーキングエリアで停めて?」


「え!大丈夫?」


水月が心配の声をあげた。


「うん……おかしいな。あたし三半規管強いはずなのに……」


そう言った鬼頭は苦しそうで、辛そうだった。