『わし達と一緒に暮らそう』
祖父母は、自分たちが引き取ると言った。
だけど、
『お父さん、あたしに引き取らせてくれないかな?』
その人は、お母さんによく似た人だった。
『お父さんはもう定年退職して年金暮らしでしょ?』
『そうだが……』
『それだけじゃないよ。』
その女の人はあたしの手を両手で包んで、あたしの目を見ながら笑った。
お母さんより年上に見えたから
お姉さんなのかなって
頭の片隅で考えてた。
『あたし、空音ちゃんと歳が近い息子がいるんだ。』
『…』
『あたしも旦那も仕事の都合で、滅多に家に帰れない…』
すごく優しくて温かい声なのに
その人の話し方は力強かった。
『だから息子も家に独りなの。』
あぁ、そっか…
その人も独りで家にいるんだ。
その時頭の中に、
お母さんの帰りを待ち続ける
あたしの姿が浮かんだ。
『あたしの息子と一緒にいてくれないかな??…すごく無愛想な奴だけど、優しい子なんだ。』
それは、この人の優しさだとわかってた。
だけどやっぱり少しだけ…
必要とされてる気がして
『………はい。』
あたしはその人の手を
弱々しく握り返した。