ミルクティーの涙空


その日は
短縮授業だった.


経緯は忘れたけど
あたしと祐輔と
友達3人で

図書室で勉強することになった.


元々
17時までやる約束.

昨日
祐輔に時間を提示したら
okをくれた.


あたしの隣に
榎木くんがいる.

それだけで充分だったし

彼の手
彼の声

全部心地良かった


16時くらいになった時

突然
友達3人共
用があるといった.

「ごめん!用があるから先帰るね☆」


笑って
帰ってしまった.

「...うちらも帰ろっか?
2人だとまずいでしょ?」


その時の祐輔の言葉は
きっと一生忘れない


「...約束したじゃん。17時までだって☆」


そう言って
はにかみながら
視線を問題集に戻した.


きゅんってなった.

漫画みたいだった.

でも 現実.

びっくりした.


そっから
確信したんだ.


"あたしは
祐輔が好きだ"

って.



_



"きゅんってなったら
好き"

漫画みたいで

なんだか
恥ずかしかった.


それで
結局19時まで一緒にやって
途中まで二人で帰った.

「寒いねー...」

「ねー」


「あのさぁ数学って
どーやったら楽しくなるの?」

「ぇ、毎日解く☆」

「...そっか笑」


こんなに近いのに

一定の距離は
越えらんない.

それが
すごくもどかしかった.


祐輔は
そんなに喋る人ではない.

話かけられたら
話す人だった.

だから
話がなかなか続かない...笑


そのあとも
特に大した話はしないで
あたしたちは
「また明日」って言って

その日は

分かれた.




家に帰って

あたしは一人
部屋に閉じこもっていた.

「数学」を解いてた.


わからないとこを
早く探したくて

わからないとこを
早く教えてもらいたくて


私は毎日

大っ嫌いな数学を

頑張って解いた.


_



6月.
初めての定期テスト.

今までの成果を試すときが来た.
今日は2日目の最後の科目.
数学だった.

「はじめ」


みんなが一斉に
テストを表にして
解き始めた.





時間は
あっという間に過ぎていった

______.....


精一杯やった.
見直しもした.
空欄はない.



「やめ」

チャイムと共に
筆記用具を置いて
背伸びをした.

祐輔を見ると

満足そうに
笑っていた.

こうして
5教科のテストは
幕を閉じた.





それから数日後.

今日は
数学の返却日.

「お願いします、神様...」

名前を呼ばれて
困ったトキのなんとやら...

点数をみた.

びっくりしたあたしは
次の瞬間から
点数がぼやけて見えなかった...


_



「.....97....!?」


信じられなくて
早く伝えたくて

あたしはみんなに隠した.


授業が終わって
早く君に教えたくて

そして
チャイムがなった.


ガタッと
1番に立って
報告に行った.

「...97だった」


「...97!?
ぇ、まぢ!?すごぃぢゃん!!☆」


「榎木くんは?」



「...俺は...」


そういって
見せた点数は...

「俺は100だよ」


「...」

あたしは愕然とした.
そんな人に教わっていたあたし.

すごい


この人、すごい.


.....カッコイイ


天才?努力家?
...どっちにしてもすごいんだ.

この人、すごい人なんだ.


祐輔は
知れば知るほど
ハマる自分がいた.


怖かった

ハマることが怖かった

ハマッたら
抜け出さそうな
泥沼みたいで...


だけど

もう 止められなかった.


"尊敬"

そう.
私が祐輔に
1番に抱いたのは
この気持ちだった.



そして
今までは触れなかったけど

これを
密かに相談している人がいた.

その人も
数学が好き.

いつもミルクティーを
飲んでいた.

電車が同じ方向で.

でも 祐輔より
優しいわけじゃない.

むしろ...ひどい.
そんなこいつの名前は

田中 翔太郎.
(タナカ ショウタロウ)

あだ名はしょーちゃん.

「しょーちゃん!ココ教え...
「キモっ」」


「...!!」



...いつもの会話.

だけど
しょーちゃんは
本当はいい人.


電話は必ず出てくれる.
ふざけてても
真剣なときはまっすぐ
向き合ってくれる.


だから
あたしにとって
大切で

決して失いたくない人.

これが
なんの気持ちかは
わからないけど

でも 失いたくない.


...気になってるってことかな.

祐輔を好きな半面
しょーちゃんも
気にはかけていた.


_



しょーちゃんを知ったのは
あの暑い5月.

中間テストを控えて
教室にテスト勉強をするため
残っていたあたし.

その時に
初めてしょーちゃんと話した.

第一印象?

...

「無愛想なミルクティー野郎」

きっと
この人は
「榎木くんと違って冷たいんだ」
と思ってた.


しょーちゃんは
数学が得意だけど
祐輔には勝てない.


性格×
頭△

運動神経はともかく
印象は全くよくなかった.

イケメンって
わけでもない.

「しょーちゃん、
ここわかんなーい」

「自分で考えよーねー☆」

「....いや
無理だから聞いているんですが」

「しょうがねぇなぁ...
どこだよ!」

最初は
突き放しても
必ず教えてくれた.

それが
しょーちゃんだった.


_



たまたま
同じ方向だったから
一緒に帰ることになった.


男女交際禁止でも
一緒に帰ることくらいは
全然大丈夫だった.


しょーちゃんは
中学で頭が良かったかって
いうと

そうじゃなかった.


だけど
人一倍の努力家.

そして
必ず実る人.


...あたしは
努力しても実らない笑


だから
羨ましかったし
帰り際
尊敬の気持ちさえも芽生えた.


あたしのクラスには
すごい尊敬出来る人ばかりいた.


_



祐輔
しょーちゃんはもちろん、

佐藤陽菜
(サトウハルナ)

この子は
同じバスケ部.

みんなが
帰ったあとも
一人で残って
練習する子.


それから

大崎 奈々
(オオサキ ナナ)

あたしの親友.

この子は
中学の時は落ちこぼれだった、
とかいいながら
いい点取ってる笑


高校から知り合った
あたしからしたら
充分努力家.


あたしは
そういう
努力家さん達に囲まれて
毎日を過ごしてる.


_



今日の帰りは
テスト関連のこと以外は
何も話さなかった.


ただ

毎回毎回
ミルクティーを買うことが
なんでなのか聞きたくて


聞いてみたら...


「美味くね!?」


「いゃ、買ったことない.」


「ミルクティー嫌いじゃないんでしょ?!」


昔、
あたしは
ミルクティーが嫌いだっけど

友達の家で
ミルクティーを出されて
初めて飲んだ.


その時から
ミルクティーは
好きになった.


「....べつに、嫌いじゃないけど」

「なら飲めよー!美味いから☆」



これが

次の日から

あたしが
ミルクティーを飲むようになった

きっかけ.


_