「そろそろ行こうかな」


くつろいでいたソファーから立ち上がり、気持ちよく伸びをした。


「今日はずいぶん余裕ね」


となりで一緒にTVを見ていた母がそう言った。



「うん、一応入学式だしな」


軽く笑みを浮かべていると、母は俺をマジマジと見つめた。



「…あんた、変わったわねえ」


「まあ、あの頃は腐ってたな。もう戻らないよ」



母は何か言いたげな顔をしたが、ニッコリ笑って


「行ってらっしゃい」


と、発する音一つひとつを柔らかく包み込むように言った。





「行ってきます」