だから、はげてない。そう笑って冗談ぽく言うつもりだったのに。
「あんだよ、お前ふざけんじゃねぇ」
ぎりぎり、と大きな手にあたしの腕はそりゃぁもう強く捕まれていて。
「...痛、痛い!」
「俺が気付いてねぇとでも、思ってんのかよ」
―――全てを見透かすような真黒の瞳が怖い。
何もかもを、知っているように、彼はまた不機嫌そうに眉を寄せる。
「泣きそうな顔してるくせに、いい加減言えや」
「.....ッ!」
あたしが、守ってきた世界。
ちっぽけで色の無い、唯一の世界。
それが、今音を立てて壊れはじめる。