「だからといって恋をしないことはいけないよ。


俺よりもいい人を見つけて、俺の分まで
幸せになるんだ。


わかったかい?」




北山さんは、私を諭すように優しく言った。





「…嫌…嫌です。

あなたより
素敵な人なんていません。一緒に…一緒に、幸せになりたいです」




肩が震えた。




「俺だって…一緒にいたい。けど無理なんだよ

俺は、確実に死んでいるわけだしさ…


だから君には
幸せになってほしい」




北山さんは泣いていた。




涙をポロポロこぼして


泣いていた。





「一緒にいてやれなくて
すまない。幸せにできなくてすまない。」




「ぐすっ…」






こくんっ




頷くだけで精一杯だった。


ぽすっ




大きな手が


私の頭を優しく撫でる。



よしよしって


小さい子を
あやしているみたいに。




「泣くなよ」



そう言って笑う北山さんは

うっすらと

消え始めた。