「クロ。ねぇ、これ見て」
隅で小さくなる私にタクミが見せたのは、
女の子が写ったケータイの画面だった。
「可愛いでしょ?俺の彼女なんだ。今度遊びに来るから、いい子にするんだよ。」
私には私の世界があって、タクミにはタクミの世界がある。
それは同じこと。
私の世界は、タクミとこの部屋とひなたぼっこでできている。
だけど、タクミの世界は私の知らない沢山のものでできている。
やっぱり分からない。
タクミの世界は、私の知らないことばかりで。
寂しさから私を救い出してくれたのはタクミだけど、
また私を寂しさに突き落としたのもタクミ。
きっと寂しいなんて感情を知らないままなら、何も思わなかったのに。
一人ぼっちで何も知らなかった私には、もう戻れない。