「風邪を引きたいのか」 前から、思い浮かべていた人の声がした。 顔を上げると、彼が想像した通りの不機嫌な顔で立っていた。 「あれ、健人。どーしたの?」 「どーしたのじゃないだろ。ほら、」 ぶっきらほうに傘を差し出したては冷たかった。 仕事がいつ終わるか分からないのに、 ずっと、待っててくれたの?