うつらうつらとしながら、霞んでいく視界に大きな欠伸を二つ三つ零した。



「(…まぁいっか、このまま寝ちまえば……)」



時間は疾うに深夜1時。


あまりにも眠たくて、身体を動かすことができない。


これは凍死……いや風邪でも引くんじゃねぇか、と冗談を呟きながら。


押し寄せる睡魔に身を委ね、意識を手放そうとした時だった。





「だ、大丈夫っ!?」





闇をも切り裂きそうな、ソプラノの声が響いた。



「っ、うわ!!」



耳元で叫ばれたため、おれは眠気も忘れ飛び起きた。


勢いあまって、ベンチから転がり落ちるところだった。


ぐわんぐわんと頭が少し揺れているのを感じながら、おれはそいつを睨み付けた。



「て、てめぇ…!!いきなり叫ぶな、うるせぇだろ!!つーか睡魔飛んじまったじゃねぇか!!」



肩を怒らせるおれを見ながら、そいつは突然地面にしゃがみこんだ。



「あー、良かったぁ!!死んじゃってるのかと思ったよ!」



ポニーテールをした女はほっとしたように笑顔を見せ、白い吐息を零した。