維奈はハッとしたように言葉を付け足した。



「えっと…コウちゃんとは…その…し、しっかり話し合うから!!別れたくないし!!……だからお願い…たろうちゃん、ウチにきてよ…」



今にもまた泣き出しそうな。


笑顔とは呼べないぐしゃぐしゃの顔。


…こんなおれのためにここまで泣いてくれるやつなんて……他にいるか…?



「………ははっ」



維奈しかいねーだろ。


……ったく、人がせっかく気ィ遣って出て行ってやったのに。


もう二度と気は変わらねーぞ?



「………仕方ねぇなぁ。べ、別にお前が好きだからとかそんなんじゃないからな!!勘違いすんなよ、ばーかばーか!!!!」



さっさとベンチから立ち上がり。


呆然としている維奈の前を振り返ることなく歩き始めた。


慌てておれの隣に並んだ維奈の顔を盗み見て、無意識にくすりと笑いを零した。


なんだ…これが幸せってやつか。








―――“器物損壊”にしか値しない命も、棄てたもんじゃねぇなぁ。