なんで、ここに…!!
おれは自分が死んだとばかりに思っていたが、違うのか?
慌てて周りを見回すと、そこは意識が途切れる前に見た景色―――公園に違いなかった。
ど、どうなってんだ…!?!?
おれを絞め殺さんばかりの勢いで抱きしめる腕は緩まない。
まるで、維奈がおれに縋り付いているようで。
「…………維奈、」
名前を呼んだ。
たぶん、声は震えてた。
「た…たろぉちゃぁぁんっ…!!!!し、死んじゃったのかと思ったよぉおお…!!」
維奈はへたりと地面に座り込み、わんわん声を上げて泣いた。
…おれのために泣いてんのか、お前。
彼氏と喧嘩したってときの涙はあんなにも心をざわつかせたのに。
なんで今はこんなに心が穏やかなんだ…?
「……おれなんか死んだってなにも変わんねぇよ…」
おれの声を遮る嗚咽が聴覚を占める。
…ん……?
雨音がしないことを不思議に思い、空を見上げると―――
「…三日月……」
あのとき。
闇に完全に溶け込む寸前。
眩い光を放ってたのは……お前、だったのか…。
おれは呆けたように口をぽかんと開けて食い入るように月を見つめた。
雨はもう止んだ。
あんなにうるさかったのが嘘みたいに静かだ。
「……ぐすっ、ずずっ……たろうちゃん、帰ろぉ…??」
さっきよりもひどい泣き顔。
不謹慎にも思わず吹き出しそうになった。