走馬灯というやつかもしれない。


脳内で、瞼の奥で。


モノクロの写真が、徐々に色を持ち始める。


…真っ赤な写真のところでそれはぴたりと止まった。



「………っ、やめろ…」



見たくない。

思い出したくない。


忘れたいのに。

忘れることはできない。


血染めの、写真―――



「っは、…うぁぁああああっ!!!!!!」



意識の中のおれは苦しそうに叫び、頭を抱えて蹲った。


…向こう側にいる“おれ”を見ている“おれ”は誰なんだろう。


写真がすべて赤く染まる。


おれを取り囲むように、視界が赤で覆い尽くされる。


赤い。
赤い。
臭い。
血。
血。
赤い。
赤い。
血。
血。
赤い。
血。
血。
臭い。


写真のはず、なのに。


なんでこんな鼻を突く臭いがするんだよ。



“ショウちゃん”



にたりと笑うユリエさんの顔が脳にこびりついて離れない。


消えろ、失せろ。


誰かおれの記憶から抹消しろ。


あんなやつの、顔、なんて、



“ショウちゃん”



やめろ!!!!!!!!


おれは人間なんて嫌いだ。


自分以外の全てを否定したくて言ってるんじゃない。


そんな変な感情はない。


ただ、ただ……許せないんだ。



「っあああ、あああああああああっ…!!!!!!!」



ユリエさんはあの後、逮捕された。


証拠はおれの家族の死体と一緒にごろごろ転がってる。


なんの問題もなく有罪だった。



―――罪状は、