意味もなく、再びぐるりとおれ以外は誰もいない部屋を見回した。
…1人暮らしらしい。
さっきちらっと靴箱を見たりもしたが、明らかに家族と住んでいる様子は見られなかった。
まだ高校生なのに、なんでだろうな。
「……どうでもいいか」
どうせ、もう会わねぇし。
散らかした写真を掻き集め、元あったように片付けておく。
視界に映るのは写真越しの維奈の笑顔なのに。
一瞬脳内を掠めたのは、見たこともない維奈の泣き顔。
…なんで胸、痛むんだよ。
維奈の笑顔は嫌いじゃなかったと、何故かこのタイミングで思い出した。
「……………おれは出てく。出てくんだ。別にこのまま居候してやろうなんざ思ってねぇんだからな。別に維奈が心配したら困るとか思ってたわけじゃねぇんだからな。別に別に、今朝食った飯がすっげー美味かったからじゃねぇからな」
だから。
「…きょ、今日は雨降ってるから外に出たくないだけだっ!!!!!!」
叫びながらさっきまでおれが寝ていた布団にぼふっとダイブした。
い、言い訳なんかしてねぇし!!!
ブンブンと首がもげそうなくらい激しく頭を左右に振り、余計な考えを吹き飛ばす。
そ、そうだ!!
た…たろうちゃんなんつー呼び名も許せねぇしな!!
おれ様にはショウっていう超イケメンな名前があんだからな!!
今思い出したとかじゃねぇからな!!
うううう自惚れんなよ、維奈!!!
脳内で捨て台詞を吐いた後、時計の短針が5を指すまでおれは爆睡していた。