「あたし、門真 維奈(かどま ゆいな)!!よろしくね、たろうちゃん♪」
バカ全開の笑顔でそうのたまったのは、おれを勝手に家へ連れ込んで飯まで与えてくれた奇特な女。
…維奈、か。
わざわざメモ帳に漢字を書いて見せるこいつは、やっぱりバカとしか言いようがない。
「…つーか、おれはショウって名前が…」
「あ、バイトの時間だ!!夕方には帰るから、たろうちゃんは留守番よろしくね!!」
聞く耳持たず。
まさにそれを体現した維奈はバタバタと玄関まで走って行くと、おれの返答を待たずに飛び出して行った。
ぽかん。
「あいつ……警戒心なさすぎにも程があんだろ…」
もはや脱帽さえ感じ始めてきた維奈の性格に、おれは大きな溜息を吐いた。
…変な押し売りとか、全部買っちまいそうだよな。
とりあえず暇になったおれはすることもなく、ぼんやりと部屋を見回した。
…ん?
なんだ、あれ?