ピタッとくっつけた耳からは3人の話声がまる聞こえ―
美奈子と呼ばれてた女がヒステリーに声を張り上げる―
「ちょっと陸!1人暮らしするってどういう事?」
「俺、20才なったらばぁちゃん家出て行くって言うとったやろ―
それに住む家も決まったし、金銭的には何の問題もない。」
「まだあの仕事続けてるの!?」
「そやけど」
「陸―もうあの仕事はやめなさい。」
あの仕事って?
なんか危ない仕事?
色んな妄想が繰り広げられるあたしの頭―
「わかった―もう好きにしてよね!」
うるさい声の女やな―
なぜかすごいイライラした
「陸―まさか―その…彩には言ってないよな?」
え?何の事?
「言うてへんわ―自己紹介だけはさしてもらったけどな。」
「なっ…―バレたらどうしてくれんねや!」
「知るか!お前が悪いやろ!じゃあもう帰りますわ―さいなら」
え―…
バタバタと玄関を出て行く音―
まだお父さんとあの女はもめてるみたい―
あの人を追おう―
なぜか走り出した体
あたしの知らない所で何が起こってたのか?
それに並木 陸って?