「あ…」

陸に腕を引っ張られながらも
私は光也に目を向けた。
彼は笑顔で手を振っていた。
それがとても嬉しくて
千亜樹は満面の笑みを返した。

暫く歩いて、陸は私の腕を離した。


「ごめん、痛かった?」

そこにはもういつもと同じ、
優しい陸が居た。


「いや、平気だよ。
 私こそ勝手に出てごめん、でも…」

最後まで聞かず陸は口を開いた。

「本当に危ない目に合わせたくないんだよ」

(危ない?光也さんが?…なんで?)

「千亜樹になんかあったら
 夏美(なつみ)さんに合わせる顔ないし。」

「…ん」

それにしても付き合ってって
そっちの付き合ってだったのか…まあそうか。
驚きすぎた自分を思い出して恥ずかしくなる。

話せば話すほど聞きたいことが増えていく。

それにやるなと言われるものほどやりたくなる。
普通はそうじゃないだろうか。




少なくとも千亜樹はそうだった。