何事もなかったかのように
自然と挨拶をしてきた陸に
呆れることすら面倒になる。


「千亜樹?千亜樹っていうの?
 よろしくねー。
 俺は桜田光也(さくらだこうや)。
 下の名前で呼んで」

彼はニコッと
慣れているようにも見える笑顔を見せた。

「はぁ…」

「千亜樹に自己紹介なんてしなくていい。
 早く帰れっつーの!」

「酷いなあ、りっくんはー」

「りっくんはやめろ、それはない。それはねぇよ。な?」


笑顔を浮かべながら
陸が殴りかかると
光也さんはひょいっと交わした。
陸に殴られないなんて凄いな、
と少し感心してしまった。
そして陸たちはまた話の続きを始めた。

「ねぇ、この子連れてっちゃダメ?
 上がなんか持ってこいって
 うるさいんだよねー」

「…やめろよ、千亜樹だけはやめろ。
 っていうか俺の身内に近づくな。絶対に」

本気で怒っている陸は少し怖い。
いや、少しどころではないか。
光也さんは全く動揺しないけど。


「陸…、言い過ぎじゃない?よくわかんないけどさ」

「……光也と関わるなよ」

「りっくんも酷すぎるよ、
 そんな彼女が大切ー?ずるいなあ」

「彼女じゃない」

「あれ、そうなの?」

「じゃ、俺たちは行くからな。2度と来るなよ。」

「はいはい、またねー」


あえて従兄弟とは言わなかったのは何故だろう。