怖くて怖くて
後ろを振り向く勇気なんて
全然なかった。

何!?何!?何…何……あれ
な…!?


全力で逃げているにも関わらず、
つけてくる男は
簡単に千亜樹の腕を掴んだ。

「…っっ!」

「千亜樹…」

「………え?」

ゆっくり振り返ると
そこには光也さんが居た。
はっきりとは見えないが
確かに光也さんが立っている。


「こ…、え、光也…さ、え?」

戸惑いを隠せず
何故か涙が出そうになった。

「え、泣くの?なんで?」

「…ストーカーかと思ったんですよぉ!!
 普通に出てきてくださいぃ……」

「千亜樹にストーカーするなんて
 物好きなヤツ居るの?」

失礼な、と思ったが
反論する気力が出なかった。

「…うるさいなぁ」

「でさー、今度温泉行かない?」