次の日。
あたしは遅刻ギリギリで教室に入った。毎日のことだけど。
「おはようございます。」悠紀さんの声。
「芙椅さんは今日もゆっくりね。バスがたくさんあって羨ましいわ。わたくしのところは1時間間隔でしかバスが出ておりませんの。」
悠紀さんはHR始まっちゃうわよ、と言って笑った。
噂の転校生がいらっしゃるのにいきなり遅刻なんてダメよ、と。
昨日の帰りのHRで、担任は転校生が来る旨だけを伝えた。だからあたしは、悠紀さんから得た情報以外持ち合わせていなかった。
気にならないと言ったら嘘になる。
でも、あたしは彼女達のように素直に目を輝かせて待つ、なんてできないひねくれ者なのだ。
あくびをしながらぼーっと待っていると、程なくして教室の扉が開いた。