優しい朝。

ゆうべ、私は。
『彼』に抱かれて波になった。
小さな不安も、素直になれないもどかしさも。
『彼』の体温がすべてを溶かしてくれた。
久しぶりに『彼』の温もりを感じた私は、『彼』の動きに寄り添う『波』になる。
心も体も。優しい温もりに満たされたまま、いつの間にか私は。
深い眠りに包まれていた。
朝が来て。『彼』が居ないことに気付く。ケータイに『彼』からのメール。
『杏奈。そのまま寝てしまってんなぁ。京都は、雪が降ってるよ』
『彼』は、すでに仕事へ出かけたらしい。
久しぶりに、名前で呼んでくれた。

私は、そのメールを大切に保護した。

小さな誤解が、嫉妬の種を蒔いた。眠れない夜が続いた。めいっぱい強がった。弱いとこ見せたくなかった。
だけど。ずっと。
こんな風に愛して欲しかった。ずっと、愛されたかった。

私の体が、『彼』の体温を記憶してる。
同じように。
『彼』も私の体温を覚えてくれていると、信じてた。

あの時までは・・・。