入院当初は元気そうにしていたお母さんだったけど。

 それが半月を越えると、少しずつ様子が変わってきた。

 元気がなくなり、痩せてきて。

 少しずつ横になる時間が長くなっていく。

 2月に入ると、お母さんは1日の大半をベッドで横になって過ごすことが多くなった。

 その頃になると、何も知らされていないあたしでも、なんとなく雰囲気で理解する。

 お母さんは本当に病気だったんだ、って。

 それでもきっと良くなると信じて、悲しいことは考えなかった。

 そしていつでも笑顔でお母さんと接しようと心に決める。

 笑顔は病気を跳ね返す。

 そんな内容を、いつかテレビでやっていたのを見たことがある。

 あたしが暗い顔だったらお母さんは笑顔になれない。

 だったらあたしが笑顔にならなきゃ。

 お母さんに笑顔になってもらって、病気を跳ね返してもらうために。

 早く良くなって、また2人の楽しい生活に戻ろうね。

 そう思いながら、ずっとお母さんの前では笑顔でいた。

 ある意味、すがるような祈りの気持ちに近かったのかもしれない。