すぐに退院できると思っていたお母さんの入院生活。

 1週間経ち、2週間経ち――1ヶ月が経過しても、お母さんは退院が出来なかった。

 ただの検査入院、とだけしか聞かされていなかったあたしも、次第に疑問を抱いていく。

 けれど当時のあたしには、疑問を調べる手立ては思いつかなくて。

 こっそりナースステーションの看護師さんに聞いてみたこともあったけど、みんな「少し時間のかかる検査」と言って、本当のことは教えてくれなかった。

 疑問に思っていたけど、病院の人がそういうなら――と、あたしはそれ以上の詮索はやめたっけ。

 もしそのときに知ったとしても、あたしにはどうする力も持っていなかった。

 今になって考えてみればそう思える。

 でも――そのときはそんなことを思う余裕がないくらい、あたしの心はお母さんを思う心で一杯だったんだと思う。

 だから、詮索を終えたあとは気持ちを切り替え、早く検査が終わることをずっと祈っていた。

 このときにはもうどうしようもなかったことを知らないままに。

 ――お母さんがあたしに真実を教えないで欲しいって頼んでいたことを知ったのは、それから少し後の話。