あたしのお母さんはすごく綺麗な長い黒髪を持っている。

 その髪に憧れて、あたしも小さい頃から長髪にし続けていた。

 お母さんが好きな髪型だから、ってことで、あたしは前髪を真っ直ぐ横にカットし、左右の前髪に繋がるサイドの髪も一房ずつ肩の少し上辺りで真っ直ぐに切り揃えた、いわゆる「姫カット」の髪型をしている。

 平安時代の女の子みたい、とか、変わった髪形ってよく言われるけど、お母さんがこの髪型が大好きって言うから、あたしも気に入っていた。

 あたしの髪の色は、お母さんが言うには「カラスの濡れ羽」のような黒い綺麗な色をしているらしい。

 お母さんの髪の方が綺麗だとあたしは思うけれど、お母さんはあたしのほうが若いんだから綺麗なのよと笑ってよく言ってくれたっけ。

 入院中、あたしはお母さんの髪をしょっちゅう洗ってあげたり、ブラシを通して綺麗にしてあげたり、三つ編みを結んであげたりして色々と楽しませようと頑張っていた。

 あたしが綺麗にしてあげると、お母さんはいつも「ありがとう」って言って微笑む。

 そして、お母さんは大好きだって言ってくれるあたしの髪に優しく触れ、撫でてくれる。

 このときの仕草があたしはたまらなく大好きで、撫でられるといつまでもそうされたい気持ちでうっとりとあたしは微笑んだ。

「この綺麗な髪形がいつまでも似合う、姫のような女の子になりなさいね」

 撫でながら、いつもお母さんは優しくそう言ってくれる。

 あたしは笑っていつも「分かったわ」と頷いていた。