「母さんね……病気なの。どうやら少し厄介なものらしくって……退院しても、前のように生活は出来ないってお医者様から言われたわ。働くことも難しいって言われたから……あなたのこと、今までどおり育ててあげられないのよ」

 だから仲春家に連絡を取って、あたしの生活を手助けして欲しい、って言った、って。

 お母さんはあたしにそう教えてくれた。

「そんな――あたし、高校に入ったらちゃんとバイトもするし、お母さんが働けなくなったって、あたしが……」

 何を言ったのか覚えていないけれど。

 でも、必死になって「あたしが何とかする」って言ったことだけは覚えている。

「今までどおり2人でも大丈夫よ。養女になんていかなくたって、あたしがお母さんのことを――……」

 仲春の家のことが嫌い、とかじゃなくて。

 ただただ、純粋にお母さんと一緒にいたかった。

 養女に、っていうことは、お母さんと離れ離れになってしまうこと。

 そう思っていたから。

 そんなあたしの気持ちを察してくれたのかは分からないけれど、お母さんは笑ってあたしの頭を撫でてくれると、

「大丈夫よ。養女って言っても、離れて暮らすわけじゃないのよ」

 お母さんも仲春の家にお世話になるの、って教えてくれた。