「さつきちゃん!」

 裕一さんからの2度目の少し強い制止が耳に入り、はっとなったあたしは慌ててお母さんから手を放し、

「ごめんなさい――」

 謝ってまた椅子に戻る。

「いいのよ」

 優しい声のお母さんは、そっと手を持ち上げてあたしの頭を静かに撫でてくれた。

「突然のことだから驚くのも無理はないわ。――遅かれ早かれ、さつきには知られることなんですもの」

「お母さん……?」

「裕一さんも座って。――今から、この子に話しますから」

「……優子さん……分かりました」

 裕一さんもお母さんの言葉に従うように、また椅子へと戻る。

「……」

 不安な気持ちを隠せないまま、あたしはお母さんを見つめる。

 そんな不安を和らげるように微笑んでくれているお母さん。

 その顔はとても優しかったけれど。

 でも――すごく悲しそうにも見えた。