「でも、どうして――」

 全てが理解できないあたしは、戸惑いの表情を浮かべながら呟くように問いかける。

 ――今思えば、頭のどこかでは察していたのかもしれない。

 けれど心がそれを拒否していたように思う。

 うっすら予感していた答えと違って欲しい――その一心で。

「……さつき、あなたを仲春家の養女に出したいの」

 静かな口調でそう言ったお母さん。

「養女……?」

 二の句が継げなくて、言葉を失うあたし。

「どうして? どうしてなの? お母さん――っ!」

 思わず立ち上がってお母さんの寝巻きを掴んで揺する。

「さつきちゃん」

 激しくお母さんを揺すっていたあたしを、裕一さんが肩を掴んで落ち着かせようとしてくれたけれど。

「あたしを養女に出すってどういうことなの? ねぇ、お母さん――」

 その制止も聞かず、あたしは必死にお母さんにすがっていた。

 聞きたくないけど、聞かなきゃいけない――

 相反する気持ちに心を押しつぶされそうになりながら。