「えっ――……」

 青天の霹靂、って――こういうことを言うんだと思う。

 ずっとお母さんと2人だけで、他に親戚も誰もいないと思っていたのに、いきなり現れたサラリーマン風の男性があたしの「お兄さん」だなんて。

 当然、あたしの頭はついていけない。

 受け入れられるはずもなかった。

 混乱するあたしに、お母さんは真実を口にする。

「正確には、血を分けた兄妹じゃないの。――さつきは覚えていないでしょうけど、あなたが小さい頃、私は1度とある人のところへ身を寄せたことがあったのよ」

 お母さんの口から語られたのは、あたしの知らない昔話だった。

 あたしが生まれてしばらくは、お母さん1人で必死に働いて育ててくれていたらしい。

 けれどあたしが3歳になる頃に、ある人がお母さんを後妻として迎えたいって言ってくれて、あたしを連れてその人の家でしばらく過ごしていたことがあった、って。

 相手はお父さんのお兄さんにあたる人で、名前は仲春雄大――あたしから見れば伯父さん、かな。

 お父さんとは結婚しないままにあたしを産んだらしいお母さんは、その雄大さんの好意に甘えるようにして結婚をした。

 そしてあたしは、今ここにいる兄と呼ばれた人――仲春裕一さんと、血の繋がらない兄妹になった、ってことらしい。