すぐにあたしの誤解は解かれる。

 その様子を見ていたお母さんとその人は、少しきょとんとしていたけど、

「違うわよ、さつき。この人は借金の取立て屋さんじゃないわ」

 お母さんが声を出して笑いながら、あたしに訂正してくれた。

「ぼくが取り立て屋か、それも面白そうだね」

 その人も少し低い穏やかな声で軽く笑っている。

 そこで自分のとんでもない間違いに気付く。

「あ……ご、ごめんなさいっ!」

 また深く頭を下げる。

「構わないよ。気にしないで」

 にっこりとあたしを許してくれたその人。

 でも、あたしの心はひやひやしたまま。

「――さつき、カバンを置いてこの人の隣にイスを持ってきなさい」

 ベッドの上部を少し起こし、もたれかかって起きているような状態でベッドにいたお母さんは、穏やかな声であたしにそう言ってくれる。

「はい」

 それに従い、あたしは近くの机にカバンを置き、もう1つあった丸イスを手繰り寄せ、その人の隣にイスを置いて腰を落ち着けると、

「――この人は、あなたのお兄さんよ」

 お母さんの声がゆっくりと響き渡った。