誰だろう?

 開けたドアに手をかけたまま、あたしは立ち尽くす。

 いつもあたしが座っている丸イスに腰掛け、お母さんの近くにいる。

 背広姿だったからサラリーマンかなって思ったけど、お母さんは会社に勤めていたわけじゃなかったから、サラリーマンが用事って言うのもおかしい。

 清潔感が漂う身なりで、真ん中で左右に分け目を作って少し長い髪を整え、穏やかそうな目に、全体的に整っていて少し甘い顔立ち。

 あたしを見て、にっこりと微笑んでくれている。

 こんな状況じゃなかったら、きっと心の中で「イケメン」だって思って少し心が浮き立つかもしれない。

 お母さんの友達――っていうには、少し若そうな人。

 じゃあ、誰だろう?

 まさか――借金取り……?

 穏やかそうな借金取りなんて、かなりおかしいとは思うし、お母さんが借金をしていたのかは分からない……でも、そのときはどうしてか分からないけれど、瞬間的にそう思って。

「あ、あのっ――」

 あたしは慌てて病室に飛び込み、その人に頭を下げながら、

「あたし、もうすぐ高校生なんです。高校に入ったらたくさんバイトしてお金を稼ぎます。だから――借金の取立て、もう少し待ってください!」

 お願いします、って言いながら、懇願していた。