虫が飛び出した段ボールの中に、一瞬、うずくまっているような人が見えた気がした。
即座に俺は目をそらした。

「多分気のせいだ。気が動転しているから、そう見えただけだ。」
段ボールからは意識的に目を反らす。
直感で、これ以上、中を見ちゃいけないとだけわかる。

目を閉じたまま段ボールの蓋をした。

自分を落ち着かせたいためにか、俺は叫んだ。

「もう嫌だ。誰からここから出してくれ。」

虚しく俺の声が響くだけ、どうしてこんな事に