「…みとも、あんな。俺───」


触れられた手を、おもいっきり振り払った。


そのまま走る。

いっちゃんに背中を向けて。


すぐそばの公園に逃げ込む。


夜明けの公園は、遊具も砂場も何もかも、まだ眠ってるみたいに見えて。



「ちょお待てや……!!」



でもすぐに追いつかれて、手首をつかまれて。



忘れるって。

いっちゃんの顔も声も、その温度も。


けどつかまれたトコから伝わるその温度を感じたとき…ぽつり、て。



…涙が、出た。



「嫌い…っ、」

「………」

「いっちゃんなんか、もう、嫌いや……っ!!」



口から漏れるのは、息が切れた声。


もう一度手を引き離そうとグッと力を入れた瞬間。




「───────、」





…いっちゃんにうしろから、抱きしめられてた。



どくん、どくん。伝わる心臓のおと。


皮膚から皮膚へ、直にひびく、いっちゃんの鼓動。



「…いっこ話したいことあんねん。」

「…………」

「このまま聞いて。」