「…もうここでええよ」


みんなの姿が後ろに見えんくなったとき、やっとの思いで口を開いた。


いっちゃんの足が止まった。


靴の先が、ウチの方に向き直る。



「…最後まで送ってくで?」

「ええって」

「みとも、」

「もうええやん。なんで……っ」



ああ、やっぱり声が震えた。



顔を上げたら、困った顔のいっちゃんがおった。


会わんかった間、頭ん中でずっと消そうとしてきたその顔が、ぴたりと重なる。



「なんで送る、とか言うん。もう構わんとってよ…」


望みがないのに優しくするんは、つきはなされるよりずっと酷だよいっちゃん。


そんで忘れたいのに、もうイヤやって思ったのに。



こうやって今、いっちゃんに気にかけてもらえてほんとは喜んでる自分は…ほんまのほんまにアホや。



「もう…さぁ。いっちゃんの顔、見たくないねんか…っ、」

「……みとも」

「もうやめるって。忘れるって決めてん。…やからもう会わへんし、声も聞かへんし、」



…だってそうやないと、忘れられへんやろ?