…動けへんかった。
改札の向こうに、いっちゃんがおった。
その隣には、髪の長い女の子。
ガタンガタンガタン──────
貨物列車が走り去っていく音が、耳なりみたいにずっと響いて。
「どしたん、みとも?」
アヤちんの心配そうな声に、ふと我に返る。
目が合って、いっちゃんの瞳が真ん丸くなって。
そこに映るウチの影が、ぐらりってゆらいだ。
「みとも〜?」
「…う、ううん!!なんでも、ない!」
改札口に切符を通す。
すれ違う。
かわいくて赤い、おっきい荷物を持ったいっちゃん。
…きっとそれは、遊びに来た彼女さんの旅行バック。
他人みたいに、アヤちんと笑いながら通り過ぎた。
笑え、笑え、笑え、笑え、
…笑え。
心臓が冷えていくのがわかる。
背中が寒くなる。
全然平気やと思ってた。
がんばれるって。好きやからって。
でも実際に彼女さんとの2ショットなんか見てもたら、やっぱ辛いよ。
…いっちゃん。