いっつもワンテンポ遅い、おとうさんの返事。
…高校んときの塾の送り迎え以来ちゃうかな。
帰りが遅くなるから、毎回迎えに来てくれてんな。
大学入試前なんか、ほとんど毎日で。
あんだけ毎日ガッツリ勉強しとったなんて、今考えたらおそろしいわ。
高校時代って、めっちゃ戻りたいなぁって思う時もあるけど、絶対戻りたくないなぁって思ったりもする。
数年前は毎日制服着てたんやもんなぁ…。
そんな懐かしい話をぽつりぽつりしとったら、ポケットの携帯が震えだした。
メールじゃなくて、着信。
…いっちゃんから、や。
「出んでええんか?」
ずっと震え続けとるバイブに、おとうさんが不思議そうに聞いてくる。
「え……うん。ホラ、あとでかけ直すし!!」
「大丈夫やで。おとうさん、存在消すの得意やから。」
…そんなん得意でどーすんの。おとうさん。
ブルル、ブルル…携帯はしばらく震えたあと、ぱったりとその息をひそめた。
車ん中が、静かになる。