あわてていっちゃんから離れようとしたら、さらにぎゅーってつかまえられた。
首の後ろに、いっちゃんの鼻がくっつく。
「…おれ、こっちのが好きやで?」
…いっちゃんの声が、近い距離で、耳に響く。
ぽちゃん。
透明なお湯の中で、いっちゃんの足と腕がゆらゆら揺れて見える。
…そう言えば、今日入浴剤入れるん忘れとったなぁ。
でも、あったかいお湯だけで十分体はいやされる。
あったかいお湯と、あったかいいっちゃんと。
湯気に包まれて、いっちゃんのゆらゆらした手足を見てるうちに、いつの間にか体の力が抜けとって。
ちっちゃく丸まってたウチの手足も、いっちゃんっていう囲いの中でゆらーっと伸びる。
ウチを丸ごと抱え込んでたいっちゃんの手がお腹に回って。
─ドキドキする。
─安心する。
正反対の気持ちやけど、いっちゃんとおると、同時に生まれてくる気持ち。
「…いっちゃん、おなかくすぐったい」
ぷにっ。
そう言うたら、いきなりいっちゃんにおなかの肉つままれた。